更新日:2019年7月11日

6.術後観察のポイント

甲状腺機能

冒頭に記した通り、甲状腺ホルモンは生涯を通じて必要となるホルモンです。全摘術を行った場合には生涯に渡る甲状腺ホルモン剤の内服が必要となります。ただし、適切な内服を行えば甲状腺ホルモンの機能は完全に補うことができるので、食事や運動、仕事にも制限はなく、普通の生活ができます。
葉峡部切除術を行った場合、残した甲状腺組織が十分量の甲状腺ホルモンを分泌できれば甲状腺ホルモン剤の内服は不要です。残した甲状腺の機能が不十分な場合には全摘術後と同様に適量の甲状腺ホルモン剤を服用する必要があります。

再発形式

再発は、切除した部位に腫瘍ができる局所再発、リンパ節転移再発、血液を介して肺や骨などの離れた臓器に腫瘍が発生する遠隔転移再発の3つに大別されます。甲状腺がんのタイプによって、頻度の高い再発形式が異なります。

腫瘍マーカー

髄様がんにおいてはCEAとカルシトニンが治療後の再発の有無を調べるために有効で、外来で定期的に測定していきます。

乳頭がんと濾胞がんでは上述したサイログロブリンを腫瘍マーカーに準じて測定します。ただし、前に記した通りサイログロブリンは正常甲状腺組織や良性腫瘍からも分泌されるので、サイログロブリン値が高くても必ずしも再発しているとは限りませんが、時間と共に毎回上昇が続く場合には再発を疑います。

未分化がんに特有の腫瘍マーカーはありませんが、病気の勢いが増すにつれて白血球数が増加することが知られています

術後の外来診察の際には、上記の通り甲状腺がんのタイプに合わせて必要な血液検査を行うことで再発の発見に努めます。

画像検査

局所再発、リンパ節再発の確認のためには超音波検査が有用です。近年では超音波検査機器の発達によって、数ミリのリンパ節再発まで発見できるようになってきました。

遠隔転移再発はCT検査や放射性ヨウ素を用いたアイソトープ検査で確認します。近年普及しているFDG-PET検査を甲状腺がんの再発の検索のために行うことはまれですが、血液検査その他で何らかの再発が疑われるものの、超音波検査やCT検査で判定できない場合に限って行うことがあります。

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