甲状腺がんとはどんな病気か?
1.一般知識
甲状腺とは
甲状腺はくびの『のどぼとけ』のすぐ下にある、蝶が羽を広げた様な形の臓器で、ホルモンの合成と分泌を行っています。甲状腺ホルモンは胎児期や乳幼児期には発育のため、成人では主に代謝調節のために働いており、生涯を通じて必要となる大切なホルモンです。
甲状腺を構成する細胞
甲状腺は濾胞細胞と傍濾胞細胞(C細胞)という2つの細胞で構成されています。濾胞細胞は血液の中から甲状腺ホルモンの原料となるヨウ素を吸収して、甲状腺ホルモンを合成・分泌する細胞で、甲状腺の99%を占めています。残り1%が傍濾胞細胞(C細胞)で、カルシトニンという血液中のカルシウム濃度調節を行うホルモンを分泌しています。これらの細胞ががん化すると甲状腺がんが発生します。
ウルトラ図解 甲状腺の病気. 伊藤公一監修. 法研.2016年.より転載
甲状腺がん罹患者数と傾向
甲状腺がんの推定罹患者数は2000年には8,800人(男性1,600人、女性6,200人)でしたが、2018年には19,800人(男性5,200人、女性14,600人)と、近年著しい増加傾向を示しています。性別でみると、男性よりも女性に圧倒的に多く発生することが特徴です。
資料:国立がん研究センターがん対策情報センター[がん登録・統計]
Source:Cancer Information Services,National Cancer Center,Japan
資料:国立がん研究センターがん対策情報センター[がん登録・統計]
Source:Cancer Information Services,National Cancer Center,Japan
国立がん研究センター がん情報サービス 2018年のがん統計予測 (https://ganjoho.jp/public/index.html)
甲状腺がんのタイプ
甲状腺がんは、さらに細かく4つのタイプに分類されます。
①乳頭がん
濾胞細胞から発生するがんで、甲状腺がんの約90%を占めます。リンパ節転移は多いですが、遠隔転移はまれで、生命に影響しにくい〝おとなしい″がんです。
②濾胞がん
これも濾胞細胞から発生し、甲状腺がんの約5%を占めています。やはり生命に影響しにくいがんですが、乳頭がんよりは遠隔転移が多く認められます。診断が難しいことが特徴で、これについては後述します。
③未分化がん
濾胞細胞から発生する、高齢者に多いがんです。急速に増大し、しばしば遠隔転移を伴うことから、専門医による早急な治療が必要となりますが、幸い頻度は甲状腺がんの約1%とまれです。
④髄様がん
甲状腺がんの約1%と少ないがんで、唯一傍濾胞細胞(C細胞)から発生するがんです。リンパ節転移が多く、遠隔転移も少ないとは言えませんが、転移した後も比較的進行が遅いという特徴があります。髄様がんの1/3は遺伝性があることが知られており、これについては後述します。