乳癌とはどんな病気か?-その検査・診断・治療の流れ-
山梨大学 第一外科 井上慎吾
更新日:2020年7月13日
はじめに
一般の方々に、乳癌の初期治療の情報をお知らせするために作成しました。誰でも理解できるように簡潔明瞭に記載しました。
現状で容認されている内容を記述し、頻度的に少ない事項や例外的事項は省略しています。
あくまで現時点での診断・治療の考え方を記載していますので、一般の方々がこのページを開いた時と考え方が変化している場合がありますので、ご理解いただければ幸いです。
乳癌の検査・治療の流れをまとめてみました。
女性の癌で最も罹患率が高く、今後も増加傾向を示しますが、多くは治療効果が期待できます。是非乳癌の知識を少しでも持ち、早期発見に努めていただきたいと思います。
1.一般知識
乳癌の頻度
- 日本人女性が発症する癌の中では、乳癌は罹患率の第1位(表1.1)で、死亡率は第5位です(表1.2)。11人に1人が罹患し、 年々増加傾向を示しています。
- 好発年齢は40-60歳代です。
乳癌の発生部位
- 乳房は20個ほどの腺葉で構成されています。腺葉は小葉といって乳汁を作る部位と、それが通る乳管で構成されています。乳汁は細乳管から一番太い主乳管に運ばれます。乳頭表面には20個ほど主乳管が開口しています。
- 乳癌の多くは、ひとつの腺葉の小葉か小葉近傍の細乳管から発生します。乳管内にだけ増殖がとどまるタイプを非浸潤癌とよび、通常は転移をおこさない予後の大変良い乳癌です。その後乳管外にでて増殖しますが、このタイプを浸潤癌とよび、転移能を持ち進行度はさまざまです。
その他
- 発育が穏やかなため、治癒したかどうかを10年無再発生存率または生存率で考えます。
無再発生存率:再発しないで生きている割合
生存率:再発の有無に関係なく生きている割合 - 自分で触診して発見することが可能です。
- 再発しても薬物治療や放射線治療が効く場合が多く、すぐ悪化することは少ないです。