食道がんと診断されたら…
特任教授 村上雅彦 教授 大塚耕司
以下の情報は信頼のできるもので、一般の方でもインターネット上でも閲覧可能です。参考になると思われます。
・国立がん研究センター がん情報サービス(https://ganjoho.jp/public/)
・食道癌診療ガイドライン2017年版(http://jsco-cpg.jp/guideline/09.html)
1. 疫学・一般知識について
WHOの研究機関である国際がん研究機関(IARC)による世界のがん統計(2018年、世界185カ国)では、がんの推定罹患者数は約1810万人、死亡者数は約960万人とされ、ともに増加傾向を示しています。
その中で、食道がんをみると、罹患率は3.2 %(約57万人)で、肺、乳腺、結腸、前立腺、胃、肝臓に次いで7番目に高く、死亡率は5.3 %(約51万人)で、肺、結腸、胃、肝臓、乳腺に次いで6番目に高い結果でした。
一方、日本ではどうかというと、国立がん研究センターがん対策情報センターの2014年の集計では、推計罹患者数は、男性:19233人(粗罹患率人口10万人31.1人)、女性:3551人(粗罹患率人口10万人5.44人)であり、男女比5.4:1で、男性は増加傾向、女性は横ばいでした。また、推計死亡者(2016年)は、男性:9553人(粗死亡率人口10万人対15662人)、女性:1950人(粗死亡率人口10万人対3.04人)であり、男女比4.9:1で、男性は増加傾向(近年は横ばい)、女性は減少傾向でした。年齢階級別では、罹患率は60〜70代がピーク、死亡率は80代がピークでした(図1,2)。
日本食道学会の全国調査(2008年)では、男女比は約6:1と男性に多く、がんができる部位は胸の真ん中に位置する胸部中部食道が約50%と最も多く、次いで胸部下部食道(約25%)、胸部上部食道(約12%)、腹部食道(約6%)、頸部食道(約5%)という比率でした(図3)。
組織型(病理組織検査)では、食道がんは主に扁平上皮がんと腺がんという2つのタイプがあり、本邦では、扁平上皮がんが約90%と圧倒的に多く、腺がんは約4%とされ、欧米では、腺がんが増加傾向にあり、約半数以上を占めています。がんといっても,組織型からさらに、高分化型・中分化型・低分化型・未分化型と分類され,低分化型・未分化型はより性格の悪いがん=治り難いがんといわれています。
日本に多い扁平上皮がんの原因としては、飲酒や喫煙、果物野菜摂取不足などによるビタミン不足が知られており、欧米に多い腺がんの原因としては、逆流性食道炎があげられ食道と胃の境からできるのが特徴で、発生要因として肥満、欧米型の食生活、喫煙などが考えられています(図4)。今後、生活習慣の変化から日本でも腺がんが増加する事が予想されます。