肝癌
国立国際医療研究センター病院 肝胆膵外科 伊藤橋司、竹村信行、國土典宏
更新日:2019年9月6日
1.肝臓癌とは
肝臓癌には大きく分けて2つ、原発性肝癌と転移性肝癌があります。この2つは腫瘍としての性質や治療法が大きく異なるので、「肝癌」の話をする場合には、どちらのことかを区別する必要があります。原発性肝癌は、もともと肝臓を形作る細胞が癌化して腫瘍を形成したものです。肝臓を作る主な細胞には、ブドウ糖をグリコーゲンとして蓄えたり、アンモニアを尿素に変えたりするなど、肝臓本来の機能を果たす「肝細胞」と、肝細胞が作る胆汁という消化液を流す胆管を形作る「胆管細胞」があります。肝細胞が癌化したのが肝細胞癌、胆管細胞が癌化したものが胆管細胞癌で、この2つで原発性肝癌の99%を占めます。しかもこのうち95%が肝細胞癌で、2番目に多い胆管細胞は4%にとどまっています。肝細胞癌はウイルス性肝炎、アルコール性肝炎、非アルコール性脂肪肝炎、自己免疫性肝炎などによる慢性肝炎や肝硬変といった肝細胞の障害を背景として発症します。一方、転移性肝癌は、肝臓以外の臓器にできた癌、例えば大腸癌、胃癌、膵癌、乳癌などから、癌細胞が血液の流れに乗って肝臓に運ばれて、そこに生着して癌病巣を作ったものです。転移の元になった臓器を原発臓器、そこにある癌病巣を原発巣と呼びます。転移性肝癌も原発性肝癌と同じように肝臓に腫瘍を作るわけですが、腫瘍としての性質は肝細胞癌と大きく異なり、原発巣の性質を持ちます。例えば、大腸癌の肝転移(転移性肝癌)は大腸にある原発巣(大腸癌)と同じ細胞でできており、癌としての性質も大腸癌と同じで原発性肝癌とは異なります。