更新日:2019年7月31日

7.手術後について

1)大腸癌手術後の予後は

大腸癌は手術で取り切れていると思われても再発することがあります。ステージが進行するにつれ再発率は上昇します。

■術後再発率
ステージI  3.7%
ステージII 13.3%
ステージIII 30.8%
(大腸癌研究会プロジェクト研究1991~1996年症例)
病理学的な所見や進行度のほかに、大腸癌の中には生物学的に悪性度が高い(再発転移を起こす危険性が潜在的に高い)ものが知られています。まず、大腸癌はそのできた場所により悪性度が異なると言われています。すなわち結腸より直腸の方が、結腸では左側より右側の方が悪性度がより高いと言われています。また約10%の大腸癌にみられるとされるb-raf (ビーラフ)遺伝子の異常をもつものは悪性度が高いといわれています。これら悪性度を鑑みて治療方針を変えてゆくことが検討されています。
再発した場合、再発した部位とその数により治療法が異なります。治療によって治癒できることもあり、しっかりとした検査の元で治療法が決定されます。大腸癌の予後は5年間どのくらいの割合の人が生存しているか(5年生存率)で表されます。ステージが進行するほど生存率は低下します。
ステージ0 94.0%
ステージ1 91.6%
ステージII 84.8%
ステージIIIa 77.7%
ステージIIIb 60.0%
(大腸癌研究会・大腸癌全国登録(2000~2004年度)より。ステージ分類は大腸癌取扱い規約第6版による)

2)術後の定期検査

再発する時期は術後3年以内に約80%以上、術後5年を超えての再発は1%以下と言われています。術後3年までは3か月に1回、3年以上は6か月に1回、術後5年間までを目安に定期検査を行います。検査は、腫瘍マーカー、CT、大腸内視鏡などを行います。

3)術後補助化学療法

術後に再発を予防するために行う抗がん剤を用いた治療を術後補助化学療法といいます。

■適応となる進行度
基本的にはステージIIIが適応となりますが、ステージIIでも、腸閉塞をきたしていた場合、多臓器浸潤を認めた(T4b)場合、腸に穴が開いていた(穿孔)場合、細胞レベルの悪性度が高い(未分化癌)場合、摘出されたリンパ節が12個未満の場合、癌の近くの静脈やリンパ管に癌細胞の浸潤がある(脈管侵襲陽性)場合は再発リスクが高いハイリスクステージIIと呼ばれ、術後化学療法が推奨されています。

■開始時期
術後1-2か月頃までに開始します。

■抗がん剤の種類
我が国では6種類の抗がん剤が保険適応となっています。点滴である5FU+ロイコボリン(LV)療法が初めて適応となり、その後効果が同じとされる3種類の内服薬治療が開発されました(ユーエフティ+ユーゼル(UFT+LV)、カペシタビン、ティーエスワン(TS-1))。さらにオキサリプラチンの点滴を併用することで、より高い再発予防効果が認められています。使用法、効果、副作用にそれぞれ特徴がありますので、どれを選択するかは主治医と相談して下さい。

■治療期間
原則6か月間行います。オキサリプラチンは6か月間投与すると末梢神経障害と呼ばれる手足などがしびれる後遺症が残ることが多くなります。最近ではステージIIや比較的進行していないステージIIIでは3か月間でも再発予防効果にほとんど差がないという報告もあり、3か月間で終了することも検討されています。

術後補助化学療法
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