更新日:2022年3月8日
2. 膵癌に関連する因子
膵癌の危険因子
膵癌の危険因子には以下のものがあります
- 家族歴:膵癌家族歴、家族性膵癌
- 遺伝性疾患:遺伝性膵炎、遺伝性乳癌卵巣癌症候群、Peutz-Jeghers症候群、家族性異型多発母斑黒色腫症候群、遺伝性非ポリポーシス大腸癌(Lynch症候群)、家族性大腸ポリポーシス
- 合併疾患:糖尿病、慢性膵炎、膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)、膵嚢胞、肥満
- 嗜好:喫煙、大量飲酒
- 職業:塩素化炭化水素曝露に関わる職業
- 複数の危険因子を有する場合は、高リスク群として検査をすることが勧められます
家族性膵癌
- 第一度近親者(親、兄弟姉妹、子)に2人以上の膵癌患者を有する家系に発生する膵癌で、既知の遺伝性膵癌症候群(上記、遺伝性疾患)を除いたもの、を言います。
- 膵癌になるリスクは、第一近親者に膵癌患者が1人いると4.5倍、2人いると6.4倍、3人以上では32.0倍のリスクとなります。
- 第一近親者に膵癌患者がいる場合は、膵癌高リスク群として慎重に検査する必要があります。
3. 膵癌の症状
- 膵癌の自覚症状としては、腹痛、食欲不振、腹満感、黄疸、睡眠障害、体重減少、背部痛などを多く認めます。
- 膵頭部癌が胆管に浸潤して胆管狭窄をきたすと、閉塞性黄疸を発症します。
- 十二指腸を中心に消化管への浸潤をきたすと腸閉塞を発症します。
- 糖尿病の新規発生や、もともと糖尿病がある患者さんは、糖尿病の増悪を多く認めます。
- わが国の膵癌登録集計では15.4%が無症状です。
4. 膵癌の診断
膵癌診療ガイドラインでは膵癌診断のためのアルゴリズムが示されています。
- 膵酵素(アミラーゼ、リパーゼ、エラスターゼ1、トリプシン)や腫瘍マーカー(CEA、CA19-9、DUPAN-2、Span-1)は膵癌に特異的ではないが、初期検査として有効です。
- 腹部超音波検査は非侵襲性で簡便かつ侵襲のない検査として、ベッドサイドで施行できる検査で、スクリーニング検査に適しています。
- スクリーニング検査で何らかの異常所見を認めた場合、CT検査やMRI検査を行います。これらは、造影剤アレルギーや著明な腎機能障害などがない限りは、造影検査を行うことが推奨されています。また、ペースメーカーや体内に金属がある場合はMRIを施行できない場合があります。これらは低侵襲で行うことができ、MRCPは膵管像や胆管像の描出に優れています。また、門脈や動脈などの膵臓周囲への進展や他臓器への転移を見るのに適しています。
- 超音波内視鏡(EUS)はCTやMRIよりも解像度も高く、小膵癌の描出に優れています。また、EUS下穿刺吸引細胞診(EUS-FNA)では組織診断が可能です。化学療法を行う前には組織診断が必須であり、EUS-FNAが有効です。
- 内視鏡的逆行性膵胆管造影(ERCP)は侵襲的な検査であり、膵炎などの合併症を併発することがあります。そのため、腹部超音波検査、CT検査、MRI検査、EUSでも診断確定が得られない場合に推奨されます。
- ポジトロン断層撮影(PET検査)は良悪性の鑑別や遠隔転移の検索に有効ですが、小さな病変の診断には限界があります。
これらの検査ののちに進行度を決定して、治療方針を決めます。