更新日:2019年5月27日

15. 食道がんと関係のある食道の病気

1)逆流性食道炎

GERD(胃食道逆流症)で胃酸や食物が食道に逆流することにより食道に炎症を生じることです。近年、食生活の欧米化や肥満やピロリ菌感染率の低下から増加傾向にあります。欧米では、逆流性食道炎で障害された食道粘膜が胃粘膜に似た粘膜に置き換わったBarrett(バレット)食道になり、その場所にバレット腺がんが発生することが多く、食道がんの6割ほどを占めています。日本では食道がんのうち4%程度とまだ少ないのですが、逆流性食道炎の増加から将来罹患率上昇が危惧されています。

症状は、胸やけ、胸痛、胃酸が上がる、喉の違和感や痛み、咳などで、原因は、下部食道括約筋や食道裂孔の緩み、肥満による腹腔内圧の上昇などがあります。

診断としては、問診と内視鏡検査で行い、粘膜の色調変化やびらん潰瘍を認めます。

治療は、生活習慣の改善と薬物治療と手術療法があります。標準治療は胃酸分泌抑制剤の内服により胃酸の逆流を抑えることです。薬物療法では症状コントロール困難で効果が無い場合や長期間内服加療が必要になると考えられる年齢の若い方で手術を行うこともあります。横隔膜の裂孔という孔が緩くなり胃が胸腔内に突出する食道裂孔ヘルニアを合併していることが多く、手術では孔を縫縮するヘルニア修復術と逆流を防止するための噴門部を胃穹窿部で巻き付ける噴門形成術を行っています。現在では殆どの施設で腹腔鏡下に行っています。

2)食道アカラシア

食道と胃のつなぎ目には、下部食道括約筋という胃内容が逆流しないようにする機構があり、食物が下りてくると弛緩(緩んで)して食物を胃へ流します(蠕動運動)。この機能が障害されて食べ物を運ぶ蠕動運動が低下し、筋肉(括約筋)が収縮したまま弛緩しなくなるのが食道アカラシアです。頻度が少なく食道神経の変性が原因と言われていますがはっきりしていません。

症状は、食物が食道内に溜まるつまり感、嘔吐、夜間に食事が口の中に逆流すること、咳、胸痛、肺炎を生じます。精神的ストレスや冷たいお水を飲むと症状が悪化します。

診断は、食道の造影検査で食道の拡張や蛇行と食道胃接合部の狭窄を認めます。上部消化管内視鏡検査では、食道内に食物貯留や異常な蠕動を認めます。また食道がんの発生リスクが高く、定期的な内視鏡検査が必要です。細いチューブを挿入し食道内圧を測る食道内圧検査で、圧の上昇や食道運動の異常が見られます。

治療は、薬物加療や内視鏡治療や手術があります。薬物加療は、カルシウム拮抗薬や亜硝酸薬を内服しますが効果はあまりありません。内視鏡治療は、バルーン(風船)で狭窄した食道を拡張します。程度の軽いものは通過を改善しますが、効果が一時的で再発することが多いです。新しい内視鏡治療に内視鏡的筋層切開術(POEM)があります。食道粘膜下にトンネルを掘り厚くなった内輪筋を切開します。まだ一部の施設しか行っていませんが良好な成績が報告されていますので、専門施設にお問い合わせください。

内科的治療で効果が無い場合は手術を行います。通過障害を解除する筋層切開と逆流防止が目的の噴門形成術を行うHeller-Dor手術という手術を行います。この手術も最近は腹腔鏡下に行われています。

3)食道良性腫瘍 

悪性腫瘍の1/5程度の頻度です。乳頭腫、平滑筋腫、顆粒細胞腫、脂肪腫、消化管間質腫瘍などがあり、半数以上は平滑筋腫です。ほとんどが無症状で、検診の上部消化管造影や上部消化管内視鏡検査で偶然発見されます。その多くは経過観察となりますが、大きくなり異物感、圧迫感、つかえ感、胸やけ、嚥下困難を生じるものは手術適応となります。また増大傾向のあるものや悪性と鑑別できないものも摘出します。乳頭種以外は粘膜下に存在し表面を正常な食道粘膜が覆った形態を呈します。そのため診断は、上部消化管内視鏡検査以外にCTやMRIや超音波内視鏡が必要になります。頻度の多い平滑筋腫は、胸腔鏡下に腫瘍のみ切除する核出術を行います。

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