日本臨床外科学会雑誌 第87巻9号 和文抄録

臨床経験

乳癌取扱い規約第19版改訂の新分類を踏まえた乳房Paget病症例の再検討

京都第一赤十字病院乳腺外科

大橋 まひろ 他

 乳房Paget病は乳頭乳輪部の表皮内に腺癌成分を認める稀な乳癌で,多くは乳腺内に乳癌病変を伴う.乳癌取扱い規約第19版で病理診断の定義が改訂され,病変が乳輪乳頭部の皮膚に限局する場合のみPaget病を主診断とする,とされた.これに基づいて,当院で2008年-2023年に乳房Paget病と診断された11例を再評価したところ,新しい定義に当てはまる症例は3例であった.さらに,この11症例について臨床像の比較を行った.初期診療では9例が乳腺外科以外の科を受診し,8例が抗菌薬や外用薬治療を受けていた.確定診断には10例がパンチ生検を受けたが,症状の自覚から診断までの期間が長いほど病期が進行していた.ER陽性率27.2%,HER2陽性率81.8%であった.手術は1例を除いて乳房全切除術が行われた.術前画像評価では,乳房造影MRIが乳腺内病変の評価に有用であった.初診時に的確な判断を行って早期診断に繋げること,および治療方針の決定において乳腺内病変を正確に評価することが,より重要になると考えられた.

症例

甲状腺に発生したパラガングリオーマの1例

古賀総合病院外科

田中 智章 他

 症例は50歳,男性.健診で高血圧を指摘され前医を受診した際に,甲状腺左葉に4cm大の結節を指摘された.頸部超音波検査では辺縁整だが内部不均一な低エコーで,穿刺吸引細胞診で悪性腫瘍が疑われ,一部ロゼット様構造を認めることから髄様癌も鑑別に挙げられた.多発性内分泌腫瘍も鑑別に各種検査が追加されたが否定的であった.診断的治療として甲状腺左葉切除と中央区域リンパ節郭清を施行した.病理検査所見ではZellballen patternを認め,免疫染色ではクロモグラニンA(CGA),シナプトフィジン,支持細胞を同定するS100に陽性を示し,上皮性神経内分泌腫瘍(epithelial neureneocrinetumors:eNETs)との鑑別となるAE1/AE3は陰性であり,甲状腺内に発生したパラガングリオーマと診断した.頭頸部にできるパラガングリオーマは副交感神経由来でカテコラミン分泌のない非機能性である.中でも甲状腺にできるパラガングリオーマは現在まで自験例を含め文献的に84例の報告例しかなく非常に稀である.若干の文献的考察を加えて報告する.

男性乳房腫瘤として発症した胸筋間脂肪肉腫の1例

イムス三芳総合病院ブレストケアセンター

山室 みのり 他

 症例は77歳,男性.6年前に右乳房腫瘤を自覚し,他院で精査したところ脂肪腫と診断された.その後放置していたが,最近になり急速に増大し生活に支障をきたしてきたため,近医より治療目的で当科に紹介となった.初診時,右乳房全体に渡り30cmを超える巨大な腫瘍が認められ,CTでは胸筋間に位置する胸壁軟部腫瘍であり,胸壁浸潤を疑う所見も認められた.針生検の結果,脂肪肉腫疑いと診断されたため,胸筋合併乳房全切除術を施行した.病理組織検査にて高分化型脂肪肉腫と診断された.本邦では乳房発生の高分化型脂肪肉腫の報告は2例と極めて稀であり,今後慎重な経過観察が必要と考えられる.

乳房に発生し根治切除が可能であった放射線照射後皮膚血管肉腫の1例

愛知県がんセンター乳腺科

中澤 綾 他

 乳房温存術後の残存乳房照射後に発生する放射線照射後血管肉腫(radiation-associated angiosarcoma:RAAS)は極めて稀であるが,局所再発率が高く,予後不良な疾患である.症例は72歳,女性.左乳癌に対し乳房部分切除および残存乳房照射を施行後,5年目に胸壁皮膚に腫瘤形成と色素沈着を認め,皮膚生検にて血管肉腫と診断した.画像検査では皮膚から皮下にかけて広範な病変の進展を認めた.手術は,腫瘍辺縁から十分な切除マージンを確保した左乳房切除術および植皮術を施行した.病理学的に切除断端は陰性であり,術後補助療法は行わず経過観察とし,術後12カ月現在,無再発生存中である.RAASに対しては早期診断と十分な切除マージンを確保した外科的切除が最も重要である.本症例について,術前化学療法の有用性に関する最新の報告も踏まえ,文献的考察とともに報告する.

乳癌術後リンパ節再発と同時に温存乳房内に発生した放射線関連肉腫の1例

鹿児島大学乳腺甲状腺外科

大薮 明典 他

 症例は54歳,女性.2014年に右乳癌に対して乳房部分切除およびセンチネルリンパ節生検を施行し,術後に化学療法と放射線治療を受けた.2022年11月より右上肢のしびれが出現・増悪し,右乳房B区域に腫瘤を認めたため摘出生検を施行し,放射線誘発性肉腫(radiation-induced sarcoma:RIS)と診断された.PET-MRIでは右鎖骨下から小胸筋にかけての軟部組織に集積を認め,RISのリンパ節転移が疑われ当科に紹介となった.右鎖骨下軟部組織に対する切除生検の結果,最終病理診断は浸潤性乳管癌の転移であった.現在はホルモン療法を実施中である.放射線誘発性肉腫は極めて稀な疾患であるが,本症例のように転移性乳癌との鑑別を要することもあり,慎重な診断と対応が求められる.

トリプルネガティブタイプの高異型度被包型乳頭癌の1例

鳥取県立中央病院呼吸器・乳腺・内分泌外科

門永 太一 他

 被包型乳頭癌(encapsulated papillary carcinoma;EPC)は乳癌全体の0.2~ 1%と稀で,多くは低~中異型度で予後良好だが,高異型度でトリプルネガティブタイプを示す例もある.症例は62歳,女性.右乳房腫瘤を自覚し,超音波検査で充実成分を伴う嚢胞性腫瘤を認めた.嚢胞内容液細胞診で高異型度腺癌が示唆されたが,針生検は壊死主体で術前は嚢胞内乳癌と診断した.乳房温存術+センチネルリンパ節生検を行い,最終病理で嚢胞外浸潤を伴うトリプルネガティブタイプの高異型度被包型乳頭癌(highgradeEPC,pT1cN0M0)と診断した.術後はトリプルネガティブ乳癌に準じた化学療法と乳房照射を行い,無再発で経過している.嚢胞性乳頭状病変では針生検のみで浸潤の有無やサブタイプを評価するには限界がある.切除標本でhigh-grade EPCと診断された場合には病理学的な浸潤の有無にかかわらず,腫瘍全体を浸潤性乳癌として治療方針を決定することが重要である.

ロボット支援下噴門側胃切除後早期の食道裂孔部ヘルニア嵌頓の1例

岡崎市民病院外科

藤井 祐希 他

 症例は70歳の男性.食道胃接合部癌に対してロボット支援下噴門側胃切除術+下部食道切除術+食道残胃吻合術(mSOFY:modified side overlap with fundoplication by Yamashita法)を施行した.術後20日目の退院後外来で腹痛を訴え,画像検査で食道裂孔ヘルニアの横行結腸嵌頓を認め,緊急開腹手術を施行した.直視下に食道裂孔から左胸腔への横行結腸の脱出を認め,食道裂孔ヘルニアを修復した.開腹手術より術後癒着が少ない鏡視下手術では横隔膜脚切開により脆弱化した食道裂孔の修復強度を上げる対策が必要で,食道裂孔ヘルニアが重症化するリスクのある高齢者ではその対策の重要性が増すと考えられる.また,食道裂孔ヘルニアの高リスク症例においてはスクリーニング目的の術後画像評価は,嵌頓や穿孔前の食道裂孔ヘルニア診断に貢献すると考えられる.

SOX+nivolumab療法後に完全奏効を得た腹膜播種を伴う胃癌の1例

都立東部地域病院外科

北島 政幸 他

 症例は75歳,男性.増悪する腹部膨満感を主訴に当院を紹介された.上部消化管内視鏡検査で噴門部および前庭部の2箇所に胃癌を認めた.CTで著明な所属リンパ節腫大と多発腹膜播種を認め,根治切除は困難と判断し,腹腔鏡下胃空腸吻合術を施行後にS-1+oxaliplatin(SOX)+nivolumabによる化学療法を開始した.治療により原発巣および腹膜病変は著明に縮小し,画像上描出されなくなったためconversion surgeryの方針とし,開腹胃全摘術(D2郭清)を施行した.術後病理検査で胃に腫瘍細胞の遺残を認めず,病理学的完全奏効(pCR)が得られた.腹膜播種を伴う進行胃癌に対してSOX+nivolumab療法後にpCRを得た1例を経験したため,文献的考察を交えて報告する.

全身ステロイド療法が有効であった大腸癌術後の十二指腸狭窄の1例

順天堂大学医学部附属静岡病院外科

石岡 直留 他

 症例は72歳,男性.便潜血陽性を契機に受診し横行結腸癌と直腸(RS)癌を認め,腹腔鏡下結腸左半切除+低位前方切除術を施行した.術後3日目の腹部単純X線検査で胃および小腸の拡張を認め,麻痺性イレウスと診断し経鼻胃管で減圧を行ったが,排液は1,500-2,600ml/日で推移した.術後29日目の上部消化管内視鏡検査で十二指腸水平脚の浮腫性狭窄を認めた.スコープ通過は可能であり,手術操作による可逆的な浮腫と考え経過観察を行った.しかし,その後も通過障害は残存したため,術後39日目よりステロイド全身投与を開始した.投与開始から速やかに効果を認め,4日後の術後43日目に胃管排液が400ml/日と著明に減少,63日目の上部消化管造影検査で十二指腸狭窄の改善を確認した.術後72日目に退院となった.今回,大腸癌手術後に生じた十二指腸水平脚狭窄に対し,ステロイド全身投与が有効であった1例を経験したため,文献的考察を加え報告する.

多発空腸憩室症を伴った真性腸石による小腸間膜穿通の1例

国立病院機構弘前総合医療センター消化器外科

三井 康太郎 他

 62歳,男性.下腹部痛を主訴に当院を受診となった.造影CTで小腸および小腸間膜周囲の脂肪織濃度の上昇と腸間膜内ガス像を認め,小腸間膜穿通と診断し緊急手術を施行した.遠位回腸の約30cmにわたり腸管および腸間膜の浮腫と壁肥厚などの炎症性変化を認めた.炎症が生じていた腸管を切除し,機能的端々吻合で再建した.また,全小腸の検索でTreitz靱帯より出てすぐの空腸に複数の憩室を認めたが,結石の存在や憩室周囲の炎症所見を認めなかったことや術中のバイタルが非常に不安定であったことなどから,憩室は切除せず温存した.症状のない憩室に対する治療選択は,解剖学的要因や患者の状態など複数の要因を考慮しなければならず複雑である.

腹腔鏡下に治療したMeckel憩室の結節形成による腸閉塞の1例

愛媛県立新居浜病院消化器外科

大野 拓也 他

 症例は14歳,男性.腹部手術歴はなし.嘔吐を主訴に当院小児科を受診した.造影CTで小腸拡張および閉塞起点の近傍に管状構造を認め,Meckel憩室による腸閉塞が疑われた.小腸の血流障害は認めなかったため,イレウス管留置による保存的加療が行われた.99mTcO4-シンチグラフィ検査では閉塞起点に集積を認め,Meckel憩室による腸閉塞と診断された.保存的加療で改善が見られず,手術目的に外科へ紹介となり腹腔鏡下手術を行った.術中所見ではMeckel憩室が回腸に巻き付いて結節を形成し,狭窄の原因となっておりMeckel憩室を含むように回腸部分切除を行った.腹部手術歴のない腸閉塞では,Meckel憩室による腸閉塞を鑑別にあげる必要がある.Meckel憩室による腸閉塞には複数の機序が報告されており,結節形成による腸閉塞は稀である.過去の報告では血流障害を伴う症例も多いが,本症例では血流障害を認めず減圧後に腹腔鏡手術が可能であった.

腹部手術歴のない88歳女性に発症した回腸憩室症由来の回腸子宮瘻の1例

津島市民病院外科

前田 真吾 他

 小腸と子宮・膣との瘻孔形成は稀であり,特に回腸憩室症を原因とする回腸子宮瘻の報告は極めて少ない.今回,腹部手術歴のない88歳女性に発症した回腸子宮瘻の1例を経験した.患者は汚染帯下を主訴に受診し,帯下が便汁様に変化したため精査を行った.画像検査にて回腸憩室と子宮後壁との間に瘻孔形成を認めたため回腸子宮瘻と診断し,腹腔鏡下に回腸部分切除および瘻孔閉鎖術を施行した.病理学的には固有筋層を欠く仮性憩室が瘻孔と連続しており,回腸憩室症が瘻孔形成の原因と考えられた.小腸子宮瘻・膣瘻は子宮全摘術や放射線治療などの既往を有する症例に多いとされるが,自験例のように治療歴のない患者にも発症しうる.したがって,原因検索において既往歴の聴取が重要である一方,憩室症などの消化管疾患も念頭に置く必要がある.また,瘻孔形成の原因に応じて適切な術式を選択することが重要であると考えられた.

虫垂切除断端から突出したステープルによる絞扼性腸閉塞の1例

札幌東徳洲会病院外科

佐藤 進之介 他

 症例は29歳,女性.心窩部痛が出現し,その後右下腹部に疼痛が移動したため,当院救急外来を受診した.CTで急性虫垂炎と診断し,腹腔鏡下虫垂切除術を施行した.根部を自動縫合器で処理し虫垂を摘出した.術後3日目に経過良好にて退院したが,翌日に下腹部痛が出現し当院に救急搬送された.CTで絞扼性腸閉塞を疑い審査腹腔鏡を施行したところ,虫垂切除断端より突出したステープルが口側腸間膜に掛かりバンド形成しており,回腸の一部が嵌頓していた.嵌頓解除後に突出したステープルを摘出,ステープルラインを4-0PDSで埋没して手術を終了した.経過良好で術後2日目に退院した.自動縫合器は簡便である一方,断端より突出遺残したステープルは絞扼性腸閉塞を引き起こしうることを,われわれ外科医は認識する必要がある.

術後7年間無再発であるrhabdoid featureを呈した上行結腸癌の1例

公立西知多総合病院外科

鈴木 真理香 他

 症例は54歳,男性.右下腹部痛を主訴に受診した.腹部CTで上行結腸に5cm大の不整な壁肥厚と周囲の膿瘍形成を認め,上行結腸腫瘍による膿瘍形成の診断で入院となった.遠隔転移を認めなかった.緊急で開腹上行結腸切除術D3郭清を行った.病理組織検査からrhabdoid feature(以下RF)を呈した上行結腸癌T4aN2M0と診断した.術後補助化学療法としてFOLFOX療法を8コース行った.現在術後7年で無再発である.自験例のような長期生存の症例は少なく,希少な症例として報告する.

中腸間膜動脈を支配動脈とする横行結腸癌の1例

蒲郡市民病院消化器外科

野村 僚 他

 中腸間膜動脈は上腸間膜動脈と下腸間膜動脈の間から腹部大動脈を起始とする稀な血管破格である.今回,中腸間膜動脈を主幹動脈とする横行結腸癌に対し腹腔鏡下結腸部分切除術(横行結腸)を施行した1例を経験した.症例は61歳,女性.横行結腸癌による腸閉塞に対しステント留置後に手術を施行した.術中,腹部大動脈から分岐し横行結腸間膜へ流入する血管を認め,中腸間膜動脈と判断した.クランプテストにより他臓器血流に影響がないことを確認し根部で結紮切離した.術後経過は良好であった.術前血管評価を正確に行い,破格のある症例では慎重な術中判断が重要である.

南極昭和基地において脊髄くも膜下麻酔下で手術を行った内痔核の1例

JCHO札幌北辰病院外科

寺﨑 康展

 日本の南極地域観測隊は,1957年の昭和基地開設以来,現在に至るまで観測を継続している.そして,その中には1~2名の医療隊員(医師)が含まれ,隊員の健康管理を担っている.しかしながら昭和基地は文明圏から隔絶されており,越冬期間中は他の医療機関への搬送が困難であるため,限られた設備と資材で完結する医療が求められる.
 今回われわれは,第65次南極地域観測隊として昭和基地越冬中に保存的加療抵抗性の嵌頓痔核に対して結紮切除術を施行した.症例は内痔核の既往がある隊員で,越冬中に脱出し還納不能となった.Goligher分類Ⅳ度の内痔核と診断し,疼痛も強いため手術適応とした.脊髄くも膜下麻酔下に内痔核結紮切除術を施行し,術後経過は良好であった.昭和基地における脊髄くも膜下麻酔下の手術は過去に2例の報告があるが,内痔核手術は今回が初である.昭和基地の特殊な医療事情とともに,これを報告する.

腹腔鏡下肝後区域切除術を行った肝原発扁平上皮癌の1例

東京都済生会中央病院一般・消化器外科

竹林 七峰 他

 症例は75歳,男性.B型肝炎による肝硬変の既往および肝細胞癌に対するラジオ波焼灼療法治療歴がある.慢性閉塞性肺疾患の定期CTで肝S7に15mm大の腫瘤を偶発的に指摘された.各種画像検査から,肝細胞癌の診断に至り腹腔鏡下肝後区域切除術を施行した.手術時間は493分,出血量は50mLであった.病理組織学的所見では,角化を伴う扁平上皮癌細胞の増殖を認め,領域性のある腺癌成分は確認されなかった.他臓器に原発巣を認めず,肝原発扁平上皮癌と診断した.術後経過は良好で第37病日に退院し,術後22カ月現在,無再発生存中である.肝原発扁平上皮癌は極めてまれで予後不良とされるが,完全切除により無再発で経過している1例を経験したため報告する.

集学的治療で初回術後94カ月生存中の膵癌の1例

JA愛知厚生連豊田厚生病院外科

酒井 颯大 他

 76歳,男性.膵癌cT3N0M0,cStageⅡAと診断し,亜全胃温存膵頭十二指腸切除術,リンパ節郭清を施行した.pT3N1aM0,pStageⅡBの診断で,S-1による術後補助化学療法を6カ月間行った.術後30カ月,CTでSMA左側のリンパ節転移と左肺下葉S6に転移を認めた.SMA周囲病変は定位放射線治療によりコントロール良好であったため,肺転移に対して胸腔鏡下左肺部分切除術を施行した.術後,gemcitabine+nab-paclitaxelおよびS-1による化学療法を行ったが,肺切除後9カ月のCTで両側多発肺転移を認め,FOLFIRINOXを開始した.不耐のためliposomal irinotecan+5-fluorouracil/leucovorinへと切り替え,clinical CRを維持していたが,肺切除後44カ月のCTで右下葉S6・S8に新たな転移を認め,胸腔鏡下肺部分切除術を2箇所施行した.初回肺切除後55カ月のCTで右肺門リンパ節転移と両肺多発転移を認め,放射線治療後に化学療法を施行中であり,初回手術から94カ月後の現在も生存中である.膵癌肺転移に対して積極的な外科的治療を行い,長期生存が得られた症例を報告する.

急速に増大した膵mixed acinar-neuroendocrine carcinomaの1例

大分大学医学部消化器・小児外科学講座

大津 亘留 他

 症例は57歳,女性.繰り返す急性膵炎を契機に膵癌を指摘された.上腸間膜静脈に半周接する切除可能境界膵癌と診断し,術前補助化学療法(gemcitabine+nab-paclitaxel)を開始した.化学療法施行中に腫瘍は24mmから50mmに膨張性に増大し,上腸間膜動静脈を左側に圧排していた.切除は可能と判断し,幽門輪温存膵頭十二指腸切除および門脈合併切除術を施行した.病理組織学的検査では腺房細胞癌と神経内分泌腫瘍が混在するmixed acinar-neuroendocrine carcinomaと診断した.成分比率と悪性度よりS-1による術後補助化学療法を施行し,術後6カ月の現在,再発なく経過している.本疾患を含む併存癌では術前診断が困難であることも多く,腫瘍の発育形態や画像経過を踏まえた診断・治療方針の検討が重要である.さらに,確定診断後はそれぞれの成分の比率や悪性度に応じた治療戦略が必要であると考えられた.

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