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日本臨床外科学会雑誌 第76巻9号 掲載予定論文 和文抄録


原著

外科的治療を必要とする門脈ガス血症の特徴

埼玉医科大学病院消化器・一般外科

深野 敬之 他

 門脈ガス血症において、手術適応の判断に有用な所見を検索すべく、当科で経験した門脈ガス血症34例について後方視的に調査し、保存的治療可能群(A群15例)と手術必要群(B群19例)の2群にわけて比較検討した。
 ショック症例、腹膜刺激徴候陽性例はいずれもA群には認めず、有意にB群に多くみられた。また、SIRS診断基準の陽性項目数、BE、CKにおいて有意差を認め、SIRS診断基準の項目では、脈拍数のみに有意差を認めた。CT所見は、腹水、遊離ガス、腸管気腫、門脈ガスが肝両葉に及んでいるか、肝外門脈までガスが及んでいるかについて検討したが、いずれも有意差はなかった。ショック症例、腹膜刺激徴候陽性例は緊急手術の絶対適応と考えられた。頻脈を含むSIRS 3項目陽性例、BE低値例、CK高値例は手術を積極的に検討すべきと考えられるが、CT所見での門脈ガスの量や広がりでは外科的治療の判断は困難と考えられた。

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症例

Corynebacterium tuberculostearicum感染による肉芽腫性乳腺炎の1例

北海道社会保険事業協会帯広病院外科

金沢  亮 他

 肉芽腫性乳腺炎は稀な良性疾患で乳癌として手術され病理学的検査の結果肉芽腫性乳腺炎と診断される報告が散見される。今回我々はCorynebacterium tuberculostearicum(以下C. tuberculostearicum)感染が原因と思われる肉芽腫性乳腺炎の1例を経験したため報告する。症例は50代女性。左乳房の疼痛を伴うしこりを主訴に受診した。触診上左C領域に40mm大の弾性硬・可動性良好な腫瘤を認めた。MMG、US、MRI上乳癌が強く疑われ針生検を施行した。組織学的所見は好中球中心の炎症細胞浸潤を認めたが悪性細胞は認めなかった。肉芽腫性乳腺炎を疑い腫瘤内容物を穿刺し培養に提出、抗菌薬投与を実施し培養結果はC.tuberculostearicumであった。投与後4週間で腫瘤径の縮小を認め、診断後8ヶ月経過するが増悪なく経過している。

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長径18cmの乳腺管状腺腫の1例

津島市民病院外科

河南 晴久 他

 症例は45歳,女性.左乳房腫瘤を主訴に受診した.左乳房全体に弾性硬,可動性不良な巨大腫瘤を認め,一部は皮膚表面へ露出していた.乳腺超音波検査では辺縁境界明瞭で,内部比較的均一な低エコー腫瘤を認めた.造影CTでは左乳房に18×15×14㎝の辺縁優位に造影される腫瘤を認めた.腫瘤は大胸筋に広く接していたが,腋窩に明らかな腫大リンパ節を認めなかった.針生検を2回施行し,乳腺線維腺腫と診断した.皮膚浸潤を伴う巨大腫瘍であり,悪性を否定できず乳房切除術を施行した.病理組織学的検査では乳腺管状腺腫と診断した.乳腺管状腺腫は稀な疾患であり,本邦報告例は自験例を含め36例のみであった.自験例はその中でも腫瘍径が最大であったので,若干の文献的考察を加えて報告する.

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高CEA血症を呈した神経内分泌型非浸潤性乳管癌の1例

NTT東日本東北病院外科

寺澤 孝幸 他

 症例は56歳女性。卵巣癌術後の定期的な腫瘍マーカーの測定において血清CEA値の上昇を指摘された。悪性腫瘍の検索の結果、FDG-PET検査で右乳腺にFDGの集積が確認され、超音波検査で右乳腺の広い範囲に点在する低エコー病変から経皮針生検を行い非浸潤性乳管癌と診断された。病変は腫瘤を触知せずマンモグラフィーでは所見はなく、MRIでは広範な濃染像を示した。手術標本の病理診断では広い範囲の乳管内癌が認められた。拡張乳管内で多稜形細胞が線維血管性間質を伴い、充実性・乳頭状構造を呈して増殖し、chromogranin A, neuron specific enolaseの発現を認め、神経内分泌型非浸潤性乳管癌と診断した。腫瘍細胞は免疫染色でCEA強陽性であり切除手術によりすみやかに血清CEA値は正常化したことから、非浸潤性乳管癌の腫瘍が産生したCEAが高CEA血症の原因と思われる極めて珍しい例と考えた。

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化学療法抵抗性で急速な転帰をとった乳腺原発紡錘細胞癌の1例

大分県立病院外科

高井 真紀 他

 乳腺紡錘細胞癌は稀な腫瘍であり、ホルモン受容体やHER2の発現が陰性であることが多く、化学療法の成否が予後に関連すると考えられる。今回、化学療法抵抗性であった乳腺原発紡錘細胞癌を1例経験したので若干の文献的考察を加え報告する。症例は75歳女性。右乳房腫瘤を主訴に前医を受診。針生検にて紡錘細胞癌の診断となり加療目的に当院紹介。胸筋温存乳房切除術およびセンチネルリンパ節生検を施行した。病理結果はpT3pN0(SLN)pMX(UICC),ER,PgR,HER2はすべて陰性であり、Ki67 39.1%と高値であった。術後療法は、AC療法4コース、DTX療法4コースを施行。術後化学療法終了後1か月で多発肺転移と診断。Bevacizumab+PTX療法で治療を開始するも1クール目途中にPDとなり、2nd-lineでEribulin投与を行い、一時的に胸水減少などの効果を認めるも術後9か月で死亡となった。

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非浸潤性乳管癌に原発不明腋窩未分化癌が併存した1例

秋田厚生医療センター外科

木村 愛彦 他

 症例は63歳の女性.左腋窩の腫瘤と疼痛を主訴に受診した.左腋窩に約8 cm大のリンパ節腫大,左乳頭のびらんを認めたが,乳房に腫瘤は認めなかった.マンモグラフィでは多形,区域性の石灰化を認めた.同部の針生検では非浸潤性乳管癌(以下,DCIS),乳頭部の擦過細胞診でも悪性だった.しかし腋窩リンパ節の生検結果は未分化癌であり,別個の病変と考えられた.全身精査で原発病変を認めず,DCISに腋窩原発不明癌が合併したものと診断した.化学療法を施行し,腋窩リンパ節の縮小が得られ,左乳房切除,腋窩リンパ節郭清術を施行した.術後に腋窩,鎖骨上下に放射線治療を行い,経過観察しているが,術後 2年6ヶ月現在,再発を認めていない.本症例のように,腋窩腫瘤が主病変の場合,潜在性乳癌,悪性リンパ腫,乳房以外の悪性腫瘍の転移などが鑑別にあげられるが,治療方針決定のため,リンパ節の組織学的診断は必須と考えられた.

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肝切除術が有効であった乳癌術後13年目の単発性肝転移再発の1例

北海道消化器科病院外科

古川 聖太郎 他

 症例は79歳女性.66歳時に右乳癌に対してBq+Axを施行された.病理は硬癌,t1n1m0,ER(+),PgR(+)であった.残存乳腺照射後に化学療法および内分泌療法を施行された.76歳時から時折,高CEA血症を認め,79歳時の腹部超音波検査で肝S4に単発性の腫瘤を認めた. CT,MRIの造影態度は非典型的であったが,ERCPで左肝管狭窄を認めたため,左肝管浸潤を伴う肝内胆管癌を疑い,肝左葉尾状葉切除,肝外胆管切除術を施行した.病理組織学的に乳癌の充実腺管癌や乳頭腺管癌に類似した組織形態を呈し,免疫染色でのER(+),PgR(+)と併せて,乳癌肝転移と確定診断した.肝切除後は内分泌療法を継続し,現在肝切除後3年生存中である.乳癌の肝転移再発の頻度は低く,ほとんどは多発性で外科手術の適応になることは少ないが,本症例のように単発性で切除可能な場合は肝切除を治療の選択肢として考慮すべきである.

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乳癌直腸転移の1例

兵庫県立がんセンター消化器外科

大山 正人 他

 症例は47歳、女性。約5年前に他院で左乳癌にて乳房全摘、腋窩郭清を施行され、化学療法後に放射線療法を行い、経過観察されていた。今回腹痛、腹部膨満を主訴に近医受診し、CTで直腸腫瘍性イレウスと診断され、当院へ紹介となった。下部内視鏡検査ではRaに全周性の狭窄を認めたが、粘膜面に明らかな腫瘍性病変は認めず、EUS-FNAにて腺癌の検出を得た。CTではRaを中心に全周性の壁肥厚、周囲リンパ節腫大を認めたが明らかな遠隔転移はなかった。転移性直腸癌も考慮したが確定診断は得られず、イレウス状態であるため手術を施行した。術中所見では腹膜播種をみとめ、また後壁を中心に仙骨前面周囲までの腫瘍浸潤をみとめ、術中所見からハルトマン手術を施行した。病理組織学的診断で乳癌直腸転移と診断した。乳癌の直腸転移はまれであり、文献的考察を加え報告する。

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感染性心内膜炎による多発内臓動脈病変を伴う右肝動脈瘤胆嚢内穿破の1例

新潟県立中央病院外科

八木 亮磨 他

 症例は77歳,女性.感染性心内膜炎および心臓弁膜症に対し人工弁置換術,同時期にくも膜下出血の既往がある.心窩部痛を主訴に近医を受診し,胆石胆嚢炎と診断され当院紹介となった.入院保存的治療中に,突然の下腹部痛が出現した.腹部造影CT検査で,左下腹壁動脈からの出血と考えられる腹壁血腫を認めた.また当初,胆石と考えられていた病変は,右肝動脈瘤であり,動脈瘤が増大し胆嚢内に穿破したものと診断した.右肝動脈瘤に対して,経カテーテル動脈塞栓術を施行した.この際に上腸間膜動脈の閉塞も確認され,これらの多発血管病変は感染性心内膜炎に伴うものと考えられた.感染性心内膜炎を契機に多発内臓動脈病変を呈し,右肝動脈瘤が胆嚢内に穿破した本症例は非常に稀である.内臓動脈瘤は破裂した場合,死亡率が高く,迅速な対応を要する.感染性心内膜炎の既往がある患者では,内臓動脈病変を呈することがあることを念頭に置くべきである.

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頸部食道切開により摘出した魚骨による食道穿孔の1例

中津川市民病院外科

武田 重臣 他

 症例は44歳の女性.頭部外傷による後遺症のため,高次機能障害を有していた.食事中の母親との口論をきっかけに興奮状態となり,鯛の煮付けを頭ごと摂取した後,咽頭違和感が出現,固形物の摂取が不能となり,3日後に当院を受診した.頸部軟線撮影,およびCT検査によりL字型の魚骨が頸部食道右側を貫通していることが確認され,内視鏡下に抜去を試みたが可動性不良のため抜去不能と判断し,手術を行った.穿孔部位に膿瘍形成は認めなかったため,手術治療は異物の除去のみを目的として,甲状腺左葉を脱転し,穿通部対側の頸部食道左側を切開し魚骨を除去した後,切開部は1期縫合を行い,近傍にドレーンを留置した.摘出した魚骨は鯛の顎骨であった.術後はセファゾリンナトリウムを7日間投与.術後6日目より飲水,術後7日目より食事を開始し,術後8日目にドレーンを抜去.術後10日目に合併症なく退院となった.

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外来化学放射線療法が著効し8年生存中であるStageⅣa食道癌の1例

高島平中央総合病院外科

田中 政有 他

 72歳女性.腹部と左鎖骨上窩に総数4個のリンパ節転移を認めた高度進行性食道癌.主病変は切除可能であり侵襲性の高い根治術は避け左鎖骨上窩リンパ節転移(以後104L転移)と上縦隔は術後化学放射線療法(以後CRT)にゆだねる方針とした.2006年6月,右開胸開腹食道亜全摘出術,2領域リンパ節郭清を行った.病理所見は4型胸部下部食道癌,pT3,pN2(No3,No9),pStageⅣaであった.術後腸瘻自己抜去から再手術となりCRTが開始できず104L転移の増大も認めた.患者は外来で可能なCRTを強く希望し, LinacX線照射を104Lに50Gy照射し,またTS-1単剤を5年間内服させる姑息的治療を行った結果,104L腫大はほぼ消失し再発,転移もなく8年間のcomplete response(CR)を継続している.

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腸閉塞発症を契機に診断された下咽頭癌術後小腸転移の1例

松江生協病院外科

横山 靖彦 他

 症例は59歳,男性.2005年に下咽頭癌(高分化型扁平上皮癌)で下咽頭喉頭全摘出術,食道抜去術,胃管再建術を施行した.2006年10月より嘔吐,腹痛が出現,癒着性腸閉塞の診断で入院となった.保存的治療では改善を認めず,緊急手術を施行した.回腸に3箇所の腫瘍性病変を認め,小腸腫瘍による腸閉塞と判断し小腸部分切除を施行した.病理組織学的所見として扁平上皮癌を認め,下咽頭癌小腸転移による腸閉塞と診断した.非常にまれな下咽頭癌を原発とする転移性小腸腫瘍の一例を経験したため,若干の文献的考察を加え報告する.

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Ball valve syndromeをきたし漏出性胆汁性腹膜炎を合併した胃GISTの1例

愛知厚生連海南病院外科

富家 由美 他

 症例は83歳男性. 1年前に胃粘膜下腫瘍からの出血にて内視鏡的止血処置を施行. ADL全介助などの患者背景から精査は施行せず経過観察となっていたが, 食後に腹痛の訴えがあり受診. CT検査にて, 十二指腸内腔を占める腫瘤と胃拡張を認め, 胃粘膜下腫瘍によるball valve syndrome(以下BVS)を疑い緊急手術を施行した. 手術では十二指腸球部に胃腫瘍が嵌頓し, 胃が十二指腸へ陥入, また, 胆嚢底部が一部壊死しており胆汁が漏出していた. 腫瘍を用手的に還納し胃局所切除術および胆嚢摘出術を施行. 腫瘍は4cm大の粘膜下腫瘍であり, 病理組織学的検査にてCD34, c-kitはいずれも陽性でGISTと診断. 胆嚢は一部に壊死による菲薄化を認めたが穿孔部位は特定できず, 胆石も認めなかった. BVSに漏出性胆汁性腹膜炎を合併した症例は非常に稀であり, 文献的考察を加え報告する.

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腹腔鏡・内視鏡合同胃局所切除術を施行した多発胃GISTの1例

KKR札幌医療センター斗南病院外科

山本 和幸 他

 症例は62歳の男性で, 近医で胃粘膜下腫瘍を6年間経過観察されていた. 増大傾向を認め当院を紹介受診した. 胃穹窿部前壁に25mm大の管内発育型,その肛門側に15mm大の管外発育型の粘膜下腫瘍を認めた. 2病変の距離は約4cmであった.口側の腫瘍は漿膜筋層縫合後に経口内視鏡による全層切除, 肛門側の腫瘍は漿膜筋層切開後に腹腔鏡操作により全層切除した. 口側の腫瘍は, ESDの手技で粘膜下層を剥離した後に, 腹腔鏡操作により, 剥離された部位の漿膜筋層を縫合し, 経口内視鏡により全層を切除した. 肛門側の腫瘍は, 腹腔鏡操作で腫瘍近傍の漿膜, 筋層を全周性に切開して腫瘍を腹腔側へ十分に牽引し, 自動吻合器を用いて切除した. 穹窿部の4cm離れた2個の胃gastrointestinal stromal tumorに対し,胃の切除, 変形を最小限にする試みを報告する.

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腹腔鏡下胃全摘術を施行した胃限局性若年性ポリポーシスの1例

北摂総合病院一般・消化器外科

松尾 謙太郎 他

 症例は37歳女性。ふらつきを自覚し当院外来を受診される。Hb4.4g/dlと高度貧血を認めたため入院となった。上部消化管内視鏡検査にて、胃全体に白色調の数mm大の山田-Ⅱ型ポリープの多発を認めた。組織学的に、胃限局性若年性ポリポーシスを疑い腹腔鏡下胃全摘術を施行した。一般に若年性ポリポーシスは、非腫瘍性の過形成性病変で癌化が少ないとされていたが最近の報告ではmalignant potentialを持つことを示唆され癌の危険因子であると考えられているため外科的切除が必要となる。術式としては、ポリポーシスの部分だけを切除するため幽門側胃切除も施行されているが再発などを考慮し胃全摘術の施行が推奨される。腹腔鏡での手技は胃拡張もあり視野確保困難であるが、患者背景 低侵襲を考慮すると有用である。本邦での報告例が少ないため若干の文献学的考察を含め報告する。

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胃原発扁平上皮癌の1例

国立がん研究センター中央病院胃外科

岩部  純 他

 症例は62歳, 男性. 2013年8月, 発熱, 食欲不振を主訴に前医受診し, 貧血を指摘された. 上部消化管内視鏡検査で胃体部小彎に不整な潰瘍性病変を指摘され, 当院紹介受診した. 当院の上部消化管内視鏡再検査にて, 胃体中部から前庭部の小彎前壁に80mm大の不整な潰瘍を伴う隆起性病変を認め, 内腔は狭窄を呈していた. 組織生検では, 充実胞巣状に増殖する低分化腺癌と診断した. 審査腹腔鏡では, 明らかな非治癒因子を認めず, 同年10月, 胃全摘術を施行した. 病理組織学的には角化成分を伴う扁平上皮癌で, 腫瘍を全割した切片いずれにおいても腺癌成分は認められなかった.
 胃原発扁平上皮癌は極めて稀であり, 発生頻度は全胃癌の0.09%とされ, 進行癌で見つかり予後不良との報告が多い. 文献的考察を踏まえ, 胃原発扁平上皮癌の特徴について報告する.

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孤立性肺転移再発を切除し5年間無再発経過中の胃神経内分泌癌の1例

竹田綜合病院外科

齊藤  亮 他

 症例は76歳,男性.体上部進行胃癌に対し開腹胃全摘術,膵体尾部脾合併切除を施行した.病理診断で胃原発神経内分泌癌の診断となった.術後1年間,S-1による術後補助化学療法を施行した.術後1年6か月に孤立性肺転移を認め,胸腔鏡補助下右肺部分切除術を施行した.病理所見でも既存の胃癌切除検体の標本と酷似しており胃癌肺転移と診断された.その後無治療経過観察しており,現在初回手術後5年経過しているが無再発生存中である.胃癌肺転移は一般に予後不良とされるが,本症例のように孤立性肺転移の場合には切除により長期生存が得られる可能性がある.また胃原発神経内分泌腫瘍はその病理学的特徴からリンパ節転移や肝転移を来しやすく,本症例のように肺転移切除により無再発生存が得られる例は珍しいと思われる.今回我々は胃原発神経内分泌癌術後の孤立性肺転移を切除し,無再発生存を得られている症例を経験したため,報告する.

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残胃に高分化型管状腺癌と同時重複した早期神経内分泌癌の1例

栗原市立中央病院外科

中川  有 他

 症例は72歳男性.58歳時早期胃癌にて幽門側胃切除術,Billroth-I法再建を受けた.胃癌検診にて要精査となり,当院で施行した上部消化管内視鏡検査にて食道胃接合部に隆起性病変を、胃十二指腸吻合部口側に0-IIa病変を、噴門部大弯後壁に潰瘍性瘢痕を認めた.生検でそれぞれpor2、tub1,悪性所見なしであった.同時多発した残胃癌と診断し残胃全的術,Roux-en-Y再建を施行した.免疫組織学的染色から食道胃接合部の隆起性病変はsynaptophysin陽性,CD56陽性,Ki-67 48%,核分裂像は9/10HPFで神経内分泌癌と診断した.残胃に分化型管状腺癌と同時多発し、早期癌の段階で発見された神経内分泌癌は非常に稀である.術前診断が難しく,症例の集積も少ないため治療方針の決定も難しかった症例を経験したので文献的考察を加え報告する.

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術前病期診断に苦慮したサルコイドーシス併存胃癌の1例

大阪掖済会病院外科

城月 順子 他

 症例は78歳,女性。健診の際の上部内視鏡検査にて胃角部小弯にIIa+IIc病変を認め当科紹介となった。術前CT検査にて傍大動脈リンパ節の腫大を認めstage IV胃癌を疑ったが,胃所属リンパ節の腫大を認めず,主病変が早期胃癌であったため,転移の鑑別目的にPET検査を施行。PET検査所見にて胃所属リンパ節への集積はなく,傍大動脈および肺門部リンパ節への集積を認め,サルコイドーシスや悪性リンパ腫が疑われた。診断も兼ねた手術療法を選択し,幽門側胃切除術B-I再建,D2郭清および#16サンプリングを施行。術後病理所見は,tub2,pT1b,ly0,v0,pN0,M0,stage Iaであり,摘出リンパ節には肉芽腫形成を認め,転移は認めなかった。
 非特異的リンパ節腫脹を伴う悪性疾患では,サルコイドーシスなどの全身性疾患の併存も念頭においた適切な術前診断ならびに治療方針の決定が重要であると考えられた。

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特徴的なCT所見を呈した腸回転異常を伴う傍十二指腸ヘルニアの1例

旭労災病院

馬場 泰輔 他

 症例は38歳、男性。前日夜に下腹部の激痛が出現し、翌日未明当院を受診した。造影CT検査所見で腸回転異常症を伴う右傍十二指腸ヘルニアと診断し、同日緊急手術を行った。手術所見ではトライツ靭帯を認めず、右側結腸間膜の固定が不完全で、腸回転異常症を伴っていた。また、ヘルニア嚢の内外に虚血腸管が存在しており、虚血腸管をすべて切除すると短腸症候群に陥ることが危惧されたため、虚血腸管は切除せずに閉腹し、慎重な経過観察を行って、後日腸の破綻が疑われた時点で再開腹して破綻小腸を切除する二期的手術の方針を選択した。術後循環動態は安定し、経口摂取開始後も順調に経過したため、再手術を行うことなく退院した。腸回転異常症を伴う右傍十二指腸ヘルニアでは、腸回転異常症に起因する解剖の特殊性から、ヘルニア嚢の内にも外にも虚血腸管と正常腸管が併存しうる。造影CT検査所見でも特徴的な所見を呈し、診断に有用である。

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門脈内および腹腔内に迷入した針を内視鏡下および腹腔鏡下に摘出した1例

九州労災病院外科

櫻井  翼 他

 症例は64歳女性. 上腹部痛及び発熱を主訴に当科外来を受診した. 病歴を聴取すると約1ヵ月前に自殺目的に針を飲用していた. 腹部造影CTでは腹腔内に針様構造物 (5 cm大)を2本認めた. 1本は十二指腸球部から門脈内に迷入しており門脈内血栓を伴っていた. もう1本は腹腔内の上行結腸近傍に認めた. 同日に緊急上部消化管内視鏡を施行し門脈内の針を抜去した. 後日残存する腹腔内の針を腹腔鏡下に摘出した. 手術は透視を併用しながら行い, 摘出後に腹腔内に針の遺残がないことを確認した. 明らかな穿孔部位は同定できなかった. 術後経過は良好で門脈内血栓のコントロールのためワーファリン内服を行った. 自殺企図に飲用した針が腹腔内及び門脈内に迷入した一例を経験した. 内視鏡下及び腹腔鏡下に安全に摘出したが, 飲用した針が門脈内に迷入した症例は本邦初であり文献的考察を加え報告する.

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消化管穿孔をきたした血管内リンパ腫の1例

済生会京都府病院外科

内藤  慶 他

 症例は76歳、女性。全身倦怠感と発熱を主訴に受診し、汎血球減少を認めたため入院となった。入院当初は骨髄異形成症候群およびそれに伴う感染症が疑われたが治療抵抗性であり、徐々に意識状態や循環動態の悪化が進行した。血管炎症候群が疑われて施行したステロイドパルス療法にて一旦は症状の改善を認めたが、腹痛の出現とともに再び全身状態が悪化した。CT所見にて腹腔内free airおよび腹水の増量を認めたため、消化管穿孔の診断にて外科紹介となった。術中所見では限局性の小腸壊死穿孔を認め、切除標本の病理学的所見にて血管内リンパ腫と診断された。術後はICUにて重症管理を要したが、血管内リンパ腫に対し化学療法を施行することにより劇的に全身状態の改善を認め救命が可能となった。

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炎症性ポリポーシスにより回盲部に閉塞を生じたCrohn病の1例

済生会新潟第二病院外科

酒井 靖夫 他

 クローン病の腸管粘膜に炎症性ポリープを生じることは少なくないが、通過障害の原因となることは稀である。炎症性ポリポーシスにより回盲部で閉塞を来した1例を経験した。症例は49歳、男性。10年前発症のクローン病で、腹痛を主訴に当院受診。大腸内視鏡で右結腸に炎症性ポリポーシスを認め、集塊のため回盲弁は確認できなかった。小腸造影では回盲部でほぼ閉塞し、腹部骨盤CT検査で回盲部に腫瘤陰影とその口側回腸の拡張を認めたため、腹腔鏡補助下右結腸切除術を施行した。切除標本では褐色調で細長い紐状ポリープが密生して、径11cm程の全周性腫瘤を形成していた。組織学的にポリープは腺管蛇行を伴う再生上皮と、リンパ過形成を伴う炎症性間質からなる炎症性ポリポーシスで、巨細胞を伴う類上皮性肉芽腫が少数認められ、腫瘍性変化や異形成はなかった。塊状の炎症性ポリポーシスによる閉塞により外科的切除を要した稀な例と考えられた。

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門脈ガス血症と上腸間膜静脈血栓症を合併したCrohn病の1例

北里研究所病院外科

平田 雄紀 他

 症例は31歳女性.Crohn病のため当院内科で内服加療中であったが,今回下腹部痛と発熱を主訴に受診した.来院時下腹部に圧痛を認めるものの反跳痛・腹膜刺激症状は認めなかった.腹部CTでは回盲部にfree airを,肝内に樹枝状に広がる門脈内ガス像および上腸間膜静脈血栓を認めたため,Crohn病を背景とした回腸穿孔と判断し,緊急開腹手術を施行した.術中所見は,回結腸静脈と回腸静脈最終枝を索状に硬く触知し,同静脈血栓症と判断し回盲部切除を行った.病理組織学的所見上,回腸末端に穿孔部を認め縦走潰瘍を伴いCrohn病と矛盾しなかった.静脈血栓は化膿性血栓静脈炎であった.術後経過は良好で術後28日に退院した.門脈ガス血症は従来,腸管壊死を伴う虚血性腸疾患の重篤な合併症とされているが,稀ではあるがCrohn病にときに合併する.自験例では早期に診断し,開腹手術に踏み切ったことで救命し得たと考えられた.

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所属リンパ節内に卵管内膜組織を認めた回腸子宮内膜症の1例

上福岡総合病院外科

松下 典正 他

 腸管子宮内膜症はS状結腸や直腸発生が主であり小腸発生は稀である。今回繰り返す腸閉塞症状に対して精査し回腸末端の狭窄を認めたため手術となった症例で、所属リンパ節内に卵管内膜組織を認めた回腸子宮内膜症の症例を経験した。症例は50歳女性。数か月前より腸閉塞を発症し精査するも原因不明であったが腸閉塞が再燃したため入院となった。腹部CT検査にて回腸末端に腫瘤を疑う所見および拡張した小腸を認めたものの、確定診断には至らなかったため試験開腹術を施行した。手術時回腸末端漿膜に引きつれおよび硬結を認め回盲部切除術を施行した。摘出標本の病理所見では、回腸の漿膜下層から粘膜下層に立方ないし円柱上皮からなる大小の腺管と腺管周囲に紡錘形細胞からなる間質組織を認めた。所属リンパ節内にも立方上皮からなる腺管組織を認め、所属リンパ節内に異所性卵管内膜組織病変を伴った回腸子宮内膜症による腸閉塞と最終診断された。

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小腸癌を契機として診断されたLynch症候群の2例

滋賀医科大学消化器外科

児玉 泰一 他

 小腸癌を契機に診断されたLynch症候群の2例を報告する。症例1:76歳男性。15年前に多発大腸癌に対し手術既往があった。食欲不振を主訴に来院し、精査で近医空腸の小腸癌と診断した。小腸部分切除術を施行し、病理組織診断で原発性小腸癌と診断した。症例2:69歳女性。20年前に上行結腸癌に対し手術既往があった。便潜血陽性を指摘され、精査で前回手術の吻合部近傍の横行結腸癌と診断した。手術中、回腸末端と空腸にも腫瘍を認め、小腸部分切除術を追加した。病理診断で小腸病変は腺癌であった。2症例ともに改訂ベセスダガイドラインを満たすためMicrosatellite Instability検査を行なったところ、どちらもMSI- Highと判定され、臨床的にLynch症候群と診断した。Lynch症候群関連小腸癌は比較的まれであるが、原因不明の腹部症状や貧血を認める際には小腸癌を念頭におく必要があると考えられた。

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異所性胃粘膜から発生したMeckel憩室癌の1例

大阪府立急性期・総合医療センター消化器外科

奥村 雄一郎 他

 症例は69歳, 男性. 右側腹部痛の精査を目的に施行されたCTで右下腹部の回腸遠位部に約3cm大の腫瘤性病変を指摘された. PET-CTでは同部位にSUV max 5.1→6.7の集積を認め, 回腸悪性腫瘍の疑いで手術施行となった. 回腸末端より約40cm口側にMeckel憩室を認め, 憩室内に弾性硬の腫瘤を触知した. 病変部から口側, 肛門側に各々5cmの部位を切離部とし, 辺縁動脈を含むように回腸部分切除術を施行した. 病理組織検査ではMeckel憩室内に発生した深達度SMの腺癌であり, 癌部周囲には異所性胃粘膜, 異所性膵組織が認められた. 異所性胃粘膜と癌部との間に組織学的な連続性が認められ, 免疫染色でも癌部は異所性胃粘膜と同一の染色性を示した. Meckel憩室癌が憩室内の異所性胃粘膜より発生したと病理組織学的に確認された症例は稀であり, 文献的考察を加えて報告する.

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腸重積をきたした盲腸リンパ管腫の1例

釧路赤十字病院外科

上村 志臣 他

 症例は73歳,男性.腹痛を主訴に当科受診.右下腹部に圧痛と筋性防御を認めた.腹部超音波検査では,右下腹部にTarget signを認め,腹部造影CTでは,盲腸を先進部とする腸重積を認めたため緊急手術となった。開腹すると盲腸が上行結腸に嵌入しており,腸重積であった.Hutchinson手技により重積を解除したが腸管に血流障害を認め,また盲腸に腫瘍性病変を触知したので,盲腸癌を疑い回盲部切除(D3郭清)を行った.切除標本では盲腸に,円形で境界明瞭な直径約3㎝の隆起病変を認め,病理検査でリンパ管腫であった.
 リンパ管腫は,幼少期に頭頸部,腋窩に好発する良性腫瘍であり,腹腔内に生じるのは稀である.また,成人の大腸重積で良性腫瘍が原因となることは比較的少なく,リンパ管腫が原因となることは極めて稀である.今回われわれは,腸重積をきたし回盲部切除を施行された盲腸リンパ管腫の1例を経験したので報告する.

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経過中に縮小した虫垂開口部のlymphoid hyperplasiaの1例

JA岐阜厚生連久美愛厚生病院外科

渡邊  学 他

 症例は64歳男性.PET/CTによる癌検診で虫垂起始部にFDGの淡い集積を認めた.下部消化管内視鏡検査では虫垂開口部に顆粒状の柔らかい隆起を認めたが,内視鏡下生検では悪性所見を認めなかった.半年後の下部消化管内視鏡検査で虫垂開口部に2cm大の桑実状のポリープの出現を認めた.内視鏡下生検ではリンパ濾胞を伴う大腸粘膜の過形成を認めた.糞石を伴う虫垂炎を第一に考慮したが,悪性疾患の混在も考慮し腹腔鏡補助下回盲部切除術を施行した.切除標本では虫垂根部のポリープは著明に縮小しており,2mm大の暗赤色の小隆起が痕跡状に認められるのみであった.病理検査では肥厚した虫垂粘膜および粘膜下に胚中心の発達したリンパ濾胞の腫大を認め,lymphoid hyperplasiaによる隆起性病変と診断した.lymphoid hyperplasiaが虫垂開口部にポリープを呈することは珍しく,文献的考察を加えて報告する.

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StageⅡ大腸癌の術後補助化学療法で重篤な副作用を呈したDPD活性低下の1例

豊橋市民病院一般外科

三竹 泰弘 他

 症例は78歳の女性で横行結腸癌イレウスに対し、横行結腸切除術を施行した。病理診断は、中分化腺癌、SE(T4)、ly1、v1、N0(0/7)、H0、P0、M0、StageⅡであった。再発高リスク群であり、術後補助化学療法としてカペシタビンの投与を開始した。投与開始後、発熱性好中球減少症(Grade2) 、下痢(Grade3)、口内炎(Grade3)を発症し入院となった。抗菌薬とG-CSF製剤の投与で発熱性好中球減少症は改善したが、腸炎が重篤化し敗血症性ショックとなった。抹消血単核球でdihydropyrimidine dehydrogenase(DPD)蛋白量を測定すると11.8U/mg proteinであり、DPD活性低下症と診断した。

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大動脈周囲リンパ節転移を伴うT1横行結腸癌の1例

飯山赤十字病院外科

中村  学 他

 症例は61歳男性で、貧血の精査目的に下部消化管内視鏡検査を受け、直腸と右側横行結腸にIp型ポリープを認めた。内視鏡的ポリペクトミーが行なわれ、陥凹を伴う横行結腸病変の病理組織診断では、鋸歯状腺腫の陥凹部に一致して長径5mm、SM浸潤(浸潤距離:1100μm)したtub2を認め、浸潤先端部ではpor1もみられた。切除断端は陰性であったが、脈管侵襲はv0、ly1と診断された。腹部CT検査では中結腸動脈と腹部大動脈に沿うリンパ節2個に転移が疑われたため、追加治療の適応となった。結腸部分切除術とD3および大動脈周囲のリンパ節郭清を行った。病理組織学的に、中間リンパ節と大動脈周囲リンパ節の計2個に横行結腸病変の転移を認めた。術後補助化学療法を行ったが、術後2年9カ月で原病死した。跳躍転移と遠隔リンパ節転移を伴う結腸SM(T1)癌は非常に稀であり、文献的考察を加えて報告する。

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単孔式腹腔鏡下手術にて治療したS状結腸腹膜垂による腸閉塞の1例

相模原協同病院消化器病センター外科

若林 正和 他

 症例は83歳, 女性. 嘔吐, 腹痛を主訴に当院を受診し, 腸閉塞の診断で入院となった. イレウス管を挿入し保存的加療としたが, 排液は減少せず, 小腸造影検査で回腸の狭窄を認めたため, 入院11日目に単孔式腹腔鏡下手術を施行した. 腹腔内を観察すると, S状結腸腹膜垂が回腸腸間膜に癒着し, 同部位に回腸が嵌入し絞扼されていた. 癒着を剥離し絞扼を解除すると, 腸管の血流は回復したため, 腸切除は施行しなかった. 術後11日目に軽快退院となった. 結腸腹膜垂による腸閉塞の報告は比較的稀であり, 術前診断は困難であるが, 単孔式腹腔鏡によるアプローチは, 診断と治療において有効な方法の1つであると考えられ, 若干の文献的考察を加え報告する.

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低位前方切除後24年目に肝転移を認めた直腸カルチノイドの1例

埼玉医科大学国際医療センター消化器外科

近藤 宏佳 他

 症例は90歳男性。24年前に直腸カルチノイドに対して直腸低位前方切除術施行歴があった。無症状であったが健診目的の胸部レントゲンで右胸水疑いと指摘されたのをきっかけにCTが施行され肝S5に腫瘤性病変を認めた。CT上胸部には異常所見を認めなかった。当初は肝内胆管癌を考慮したが高齢であることを踏まえ肝S5部分切除術を施行した。病理組織学的検査で直腸neuroendocrine tumor(NET)と診断され、24年前に手術施行した直腸カルチノイドの肝転移と判断された。術後7か月経過現在無再発生存中である。直腸カルチノイドは一般に低悪性度といわれるが進行が緩徐であることを踏まえ、直腸カルチノイド治療歴のある患者に対しては長期経過後の再発もありうることを念頭におきつつ診療にあたることが重要と思われる。

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鈍的外傷を契機に膿瘍化した肝血管腫の1例

健和会病院外科

本田 晴康 他

 症例は農林業に従事する79歳男性。16年前の胃癌手術時に肝左葉外側区域の85mm大の血管腫を指摘されたが、増大傾向なく無症状に経過していた。今回、山林での伐採作業中に直径3cmの木の枝が心窩部に当たり、数日後より発熱が生じた。近医で抗生剤が投与されたが、高熱が持続したため当院紹介となった。画像検査で血管腫の大部分が膿瘍化していると判断し、経皮経肝ドレナージを施行した。細菌培養検査でペニシリン耐性大腸菌が検出されたが、感染経路は不明である。ドレナージ等により解熱したが、血管腫構造が残存しており、膿瘍腔の縮小が認められなかったため手術(肝左葉外側区域切除)を施行した。切除肝は155gで、中心部に線維性被膜で被われた嚢胞状病変があり、内部には膿が充満していた。組織学的には血管腫構造が認められ、内部に膿瘍形成が認められた。肝血管腫が膿瘍化した稀な1例を経験したので手術適応などの考察を加え報告する。

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腹腔鏡下手術にて摘出した胆嚢に付着した副肝の2例

KKR札幌医療センター外科

大槻 雄士 他

 症例1は、52歳、男性。右季肋部痛を主訴に当院内科を受診した。血液、画像検査にて胆石性胆嚢炎の診断となり、当科で腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行した。術中、胆嚢漿膜面に赤褐色の15mm大の腫瘤を認めた。病理学的組織検査では、小葉構造をもつ肝組織で、副肝と診断された。症例2は、74歳、女性。心窩部痛を主訴に近医を受診した。血液、画像検査にて胆石性胆嚢炎・総胆管結石の診断となり、内視鏡的排石後に、当科で腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行した。術中、胆嚢漿膜面に赤褐色の10mm大の腫瘤を認めた。病理学的組織検査では、正常構造をもつ肝組織であり、副肝と診断された。
 副肝は本邦では現在まで約100例程度しか報告されていない稀な疾患であり、腫瘤が小さいことが多く、他疾患の手術時に発見されることが多い。今回、胆石性胆嚢炎に対する腹腔鏡下胆嚢摘出術の際に、胆嚢に副肝を認めた2例を経験したため、若干の文献的考察を加え報告する。

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術中Rendezvous法が有効であった総胆管結石を合併したLemmel症候群の1例

国民健康保険飛騨市民病院外科

佐藤 悠太 他

 症例は77歳、男性。腹痛と嘔吐を主訴に当院を受診し、精査で傍十二指腸乳頭憩室が原因の胆管炎・閉塞性黄疸を認め、Lemmel症候群と診断した。ERCPを施行したが、2箇所の乳頭憩室により胆管挿管困難であった。保存的治療で軽快したが、患者は手術を希望されなかった。約11か月後にLemmel症候群の再燃を認めた。抗生剤投与で軽快したが、退院約1か月後に腹部不快を主訴に再度受診した。精査にて総胆管内に多発する結石の出現を認め、Lemmel症候群に合併して急性発症した総胆管結石症と診断し手術加療目的に当科入院となった。乳頭機能不全が疑われたことより、術中Rendezvous法を用いた内視鏡的乳頭括約筋切開術および内視鏡的総胆管結石除去術を施行した。多発総胆管結石を合併したLemmel症候群に対し、術中Rendezvous法を用いたESTを施行して良好な経過が得られ、有効な手段となりえると考えられた。

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好酸球性胆嚢炎を発症し胆嚢摘出術を施行した好酸球増多症の1例

茨城県立中央病院地域がんセンター外科

小林 光助 他

 症例は41歳男性で、既往に気管支喘息、好酸球性副鼻腔炎がある.心窩部痛、発熱のため当院救急外来を受診し、腹部造影CTで胆嚢壁のびまん性肥厚を認め、急性胆嚢炎の診断で緊急胆嚢摘出術を施行した.術後も心窩部痛の改善を認めず、上部消化管内視鏡検査で胃十二指腸に多発する潰瘍を認めた.また、採血で好酸球数の異常高値を認め、好酸球性胃腸炎を随伴した好酸球増多症の診断となり、ステロイド治療が奏功した.既往に気管支喘息や好酸球性副鼻腔炎を有する急性消化器疾患では好酸球性胆嚢炎、好酸球性胃腸症を念頭に置いて診療にあたる必要があると思われる.

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胆嚢管カルチノイドの1例

帯広厚生病院外科

村川 力彦 他

 症例は61歳男性.腹痛にて近医を受診,胆石症と診断された.術前精査で,横行結腸肝弯曲部に早期大腸癌を認めたが,内視鏡的切除が困難なため,手術目的で紹介となった.手術は腹腔鏡下結腸右半切除術および胆嚢摘出術を施行した.術中,胆嚢管内に腫瘤を認めたため,腫瘍を含め切除した.切除標本では胆嚢管に14x10mmの黄色調の亜有茎性腫瘍を認めた.病理組織学的検査で腫瘍細胞は核が円形から卵円形を呈し,好酸性顆粒状胞体を有し,胞巣状,索状,リボン状に増殖していた.免疫染色ではsynaptophysin陽性,chromogranin A陽性,CD56陰性,Ki-67指数は3-4%であった.以上より胆嚢管カルチノイドと診断した.腫瘍は核分裂像,脈管侵襲,神経周囲浸潤を認めなかったが,線維筋層への浸潤を認めた.術後4年6ヶ月再発なく経過している.

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手術単独で治療した胆管原発小細胞癌の1例

佐賀大学医学部一般・消化器外科

佐藤 博文 他

 症例は70歳,男性.閉塞性黄疸にて精査し,CT検査で三管合流部付近に遅延性の増強効果を伴う壁肥厚を認め,内視鏡的逆向性胆管造影時の生検にて腺癌の診断を得た. 胆管癌の術前診断で亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を施行した.術後病理組織検査で腺癌成分の混在する小細胞癌(Bd, 2.3×1.5cm, 平坦浸潤型, ss, INFγ,ly1,v1, pHinf0, pGinf0, pPanc0, pDu0, pPV0,pA0, pHM0, pDM0, pEM0 T2,N0,H0,P0,M0 Stage IB)と診断した.術後補助化学療法併用なく16ヶ月経過し、現在無再発生存中である.胆管原発の小細胞癌はまれであり、本症例のように根治的外科切除が行われれば長期生存が期待できる.

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十二指腸球部断裂を伴った鈍的腹部外傷によるIIIb型膵損傷の1例

総合病院中津川市民病院外科

鳥居 康二 他

 症例は40代女性であり,乗用車運転中に腹部を打撲し,救急搬送された.来院時ショック状態であり,腹部造影CT検査にて, 腹腔内出血を伴う膵実質と十二指腸球部断裂の所見を認め,緊急手術を施行した.初回手術はdamage control surgery(以後、DCS)とし,二期的に再建手術を施行した.膵実質は門脈右縁で断裂していたため,膵空腸吻合および十二指腸憩室化手術とした.  
 文献的に,膵・十二指腸損傷に対する再建術式としてのコンセンサスはないが,可及的に膵機能温存を目指した術式を選択すべきである.また,DCSを先行させることにより,二期的な再建が安全に行える可能性がある.

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門脈腫瘍栓を認めた膵頭部膵管癌の1例

岐阜大学高度先進外科

村瀬 勝俊 他

 通常型膵癌は門脈浸潤をきたすことが多いが、門脈腫瘍栓をきたすことは稀である。門脈腫瘍栓を認めた膵頭部膵管癌を経験したので報告する。症例は72歳男性。発熱、嘔吐で受診した際、CTで主膵管への膵石嵌頓、尾側膵管の拡張を認めた。ERCPで主膵管と下部胆管の狭窄を認めたが、造影CT、EUSで膵頭部に腫瘤影は認めず、病理学的にも悪性所見を認めなかった。慢性膵炎による狭窄の診断で経過観察となった。2か月後に閉塞性胆管炎を発症し再精査を行った際、CT,EUSで門脈内に腫瘤影を認めた。病理学的に確定診断は得られないも、膵頭部にFDG-PET CTでの集積とMRIでの拡散低下を認めたため膵頭十二指腸切除術、門脈合併切除術を施行した。  
 病理診断で膵実質内に広範囲に進展する高分化型腺癌を認めた。門脈壁浸潤を認め門脈内腫瘤は腫瘍栓であった。

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尿膜管小腸瘻を伴った尿膜管膿瘍の1例

西東京中央総合病院消化器科

岩崎 謙一 他

 症例は68歳の男性。発熱と腹痛を主訴に当科を受診。腹部CT検査上、尿膜管膿瘍を疑う所見を認め、精査加療目的に入院となった。水溶性消化管造影剤の内服および、その後の腹部CT検査で尿膜管と小腸の瘻孔形成が明らかとなった。以上より、尿膜管小腸瘻の診断で手術を施行。尿膜管膿瘍壁は回腸末端から90cmの回腸と強固に癒着しており、回腸および膿瘍腔を含んだ尿膜管を一塊にして摘出した。組織所見では、尿膜管小腸瘻に矛盾しない所見であった。術後経過は良好であり、術後15日目に退院となった。尿膜管膿瘍は膿瘍腔が増大し、その脆弱部より膿が排出されることがある。排膿部位の大部分は臍や膀胱であるが、極めて稀に自験例のように消化管に穿破する。今回、尿膜管と小腸が交通を認めた非常に稀な症例を経験したので報告する。発熱、腹痛を伴う下腹部正中の腫瘤を認める場合は、本症例のような病態も念頭に入れ診療すべきであると考えられた。

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転移再発に対し集学的治療を行った非機能性悪性褐色細胞腫の1例

平鹿総合病院外科

榎本 好恭 他

 54歳男性。2007年2月早期胃癌に対し幽門側胃切除術を施行した。半年後に右副腎腫瘍が出現したため同年10月摘出術を施行したところ、病理組織学的に悪性褐色細胞腫と診断された。12病日に退院したが、退院後10日目に発語障害が出現し、多発脳転移と診断された。その後肺転移、坐骨直腸窩転移が出現し、局所治療として外科的切除、放射線治療を行った。全身治療としてシクロホスファミド、ビンクリスチン、ダカルバジンを併用した化学療法を約2年間施行したが、多発脳転移の悪化により2010年10月永眠した。
 悪性褐色細胞腫は、転移巣からの過剰なカテコラミンによる内分泌症状によって予後が決まることが多い。本稿では、非機能性悪性褐色細胞腫と診断され、腫瘍の遠隔転移、特に脳転移が致命的となった極めて稀な症例を経験したので報告する。

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CTで術前診断し腹腔鏡手術を施行した特発性分節性大網梗塞の1例

松阪中央総合病院外科

前田 光貴 他

 症例は32歳男性.2日前からの右下腹部痛を主訴に当科外来を受診.身体所見では右側腹部から右下腹部に限局する圧痛,反跳痛を認めた.腹部CTで臍直下右側よりの腹腔内に限局性の脂肪織濃度の上昇を認め,外傷の既往や捻転の所見を認めないことから特発性分節性大網梗塞と診断した.入院後,絶食・抗生剤にて保存的加療を行ったが,症状の改善を認めず入院3日目に腹腔鏡下大網切除術を施行した.手術所見では右側大網の一部が暗赤色に変色し浮腫を認め腹壁に癒着していた.術後経過は良好で術後3日目に退院となった.特発性分節性大網梗塞は急性腹症を呈するまれな疾患であり,臨床的に急性虫垂炎との鑑別が問題になることが多い.以前は手術で初めて診断されるケースが多かったが,近年では画像によって術前診断できるようになってきている.今回我々はCTで術前診断し腹腔鏡下手術を施行した特発性分節性大網梗塞の1例を経験したので報告する.

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治療に難渋した腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術後メッシュ感染の1例

高岡市民病院外科

寺川 裕史 他

 症例は66歳,男性.右鼠径部腫脹を主訴に当科を受診した.診察上は両側鼠径部に腫脹を認め両側鼠径ヘルニアと診断されたが,患者の強い希望があり右側のみ腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術を行った.その1か月後に左側の手術を希望され,前方アプローチで手術を行った.さらに1か月経過した頃,右下腹部から鼠径部にかけての腫脹,疼痛を主訴に来院した.精査にて右鼠径ヘルニア術後のメッシュ感染と診断された.経皮的ドレナージを行ったものの治癒には至らず,腹腔鏡を併用し前方アプローチにてメッシュ除去術を行った.腹腔鏡下鼠径ヘルニアにおけるメッシュ感染の報告はまれであり,治療に難渋した1症例を経験したので報告する.

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腹腔鏡下に診断・治療した鼠径部interparietal herniaの1例

公立岩瀬病院外科

齋藤 敬弘 他

 鼠径ヘルニアのまれな1亜型であるinterparietal herniaを腹腔鏡下に診断・治療した1例を経験したので報告する.
 症例は65歳男性.吐き気,嘔吐の訴えで来院し腸閉塞の診断で入院となった.造影CTにて,拡張した小腸が右下腹壁動静脈の外側から内側へ向かい,精巣動静脈・臍動脈を背側に圧排していた.内ヘルニアや異常索状物による絞扼性イレウスを疑い手術を施行した.
 腹腔鏡下に腹腔内を観察すると血性腹水・小腸の発赤を認めたが,すでに嵌頓は解除していた.内鼠径輪の内側にヘルニア嚢が存在し小腸が嵌頓したと診断した.TAPP(transabdominal preperitoneal repair)法にて腹膜前腔を剥離すると,ヘルニア嚢は腹膜と横筋筋膜との間に存在し,interparietal herniaと診断した.ヘルニア嚢を切除し腹膜前腔にmeshを留置した.

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